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エッセイ番外編
出産するぞ!オークランド その6
本日は、T先生の下で2度目の検診だ。主な目的は、子宮ガン検診。NZでは、妊娠を機に検診を受ける人が多く、しかも、無料で受けられる。 私の場合、2年以上この国で働いているため、国民と同様に無料だ。ただし、一部有料の検診もあるらしいが。
まず、内診を行い、子宮口の細胞の採取などを行う。後は前回も行ったように、体重と血圧の測定、帰りには血液検査も行った。
わずか12週弱にして、この腹部の膨らみ様について、助産婦の友人に驚かれたということもあり、相談したが、個人差があるとのこと。 また、この時期の子宮の高さはまだ数センチ盛り上がった程度なので、臍まわりの膨らみは、押された胃やガスなどであろうとのことだった。なるほど、頻繁に、腹部には膨張感を感じている。
一通り終わった後、「夫」(この他に「主人」バージョンも。徐々に慣れつつある呼び名)を呼んできてくれた。 ベビーの心音を聴くためだ。まさか聴けるとは思わなかったので、二人ともびっくり。 下腹部に冷たいジェルを塗り、その上にマイクのようなものを密着させると、「しゅ、しゅ」と、次第に列車が走るような音が近づいてきた。体長にしてわずか数センチの彼(彼女)は、子宮の中を泳ぎまくっているらしい。 道理で、近づいたと思ったら、次の瞬間にはまた、遠ざかっていく。「(お腹の出っ張りは)ただの脂肪じゃなかったんだ。そこに本当にいるんだね」と、夫。つわりを経験した私ですら、こうして心音を聴いてみてようやく妊婦なんだという実感がわいたぐらいなのだから(のん気過ぎると、世のお母さん方に怒られそうだが)、彼、そして世の中の男性にとって、自分の子供が今、ここに存在するということは、さぞ不思議で、理解しがたい事実なのだろう。 母性に比べ、父性は生まれにくいものだというが、十月十日、明らかに自分だけの体ではないという実感を持ちつつ過ごす女性と比べるのは、ちょっと可哀想かもしれない。
2004年3月12日
午後から2回目の診察。
仕事を抜けて、車で20分の病院へ連れて行った。
今日は内診だというので、俺は診察室の外で待っていた。
仕事が結構忙しかったので、こんなときにボーっと待ってるのは歯がゆい思いがしたが すぐに睡魔が襲ってきて、いつの間にか舟を漕いでいた。
ふと、人の気配がして顔を起こすと、先生が目の前に立っている。
「せっかくですから、赤ちゃんの心音を聞いてみませんか?」
うたた寝していたのを見られたかな?という、羞恥心のほうが先立ち、 そこには繕っている自分がごく淡々と
「あ、そうですね」
なんて気のない返事をしていた。
しかし、診察室へ向かう数秒の間に
「赤ちゃんの心音???」
今までは、妊娠検査薬や妻の体調の変化を見ることで、子供が宿っていることを論理的に客観的に納得はしていたが、それが「赤ちゃんの心音」となれば、疑いのない事実だ。
赤ちゃんがいることを、間接的にではあるが、自分の感覚に触れることができるのだ。
これはすごいことだ。なんてことを考えながら診察室に入ると すでに妻は診察台の上に横たわっていた。
先生がマイクのようなものを妻のお腹に当てると、増幅されたお腹の音が耳に入ってきた。
やはり子供はまだ小さいようで、先生がマイクを移動させて探している。
と、突然「シュ、シュ、シュ」という遠くで蒸気機関車が走っているような音が聞こえた。
「はい、これが赤ちゃんの心音です。」
まだ小さいはずだから、当然心拍数も早い。
ちょっと感動だ。
本当に赤ちゃんがいることを実感できた気がした。
自分が少しお父さんになってきたような気もしてきた。
2004年3月12日
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