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「出産するぞ!」はめでたく出産してしまいました。
 
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どうも、今週はずっと体がだるかった。いつも仕事で少々疲れても、帰ってビールを 「プハーッ」とやれば、落ち着くんだけど、あまり飲む気もしない。昼間っからジン トニックやら、ビールやら、チャンポンのダラ飲みをやっていた昨年がうそみたい。 よく考えると、この週は、早く仕事が終わっても疲れて、お酒が美味しくなかった。この私が美味しくお酒を飲めないなんて、何かある・・・と「女の勘」が働いた。
 
出掛けたいけど、遠出はちょっと…ということで、デボンポートへ。
最近、ウィンドウショッピングもしていなかったので、アンティークショップやネコ グッズの店などを覗いてみる。古本屋では、なぜか谷崎潤一郎の「痴人の愛」を購入。 もちろん英語版で、タイトルは「Naomi」となっている。日本文学を英語で読むのは 好きだ。かつて日本語で読んだことがあるストーリーだと、英語初心者でも理解しや すい。
彼は、古本屋に行くと、いつもオークランドの歴史についての本を物色する。歴史自 体が好きで、今は個人サイトの製作のため、さまざまな参考資料を集めているところだ。…だが、本当に使っているのかは定かではない。購入後しばらくして、片隅でホコリを被った本に出くわすことは、多々ある。
彼がまだ、お目当ての本に出合えないようなので、私は、薬局へ行ってくることにし た。やはり、数日前からのだるさが気になるのだ。「妊娠検査薬、ありますか?」と、お店で尋ねる。メーカーは、ニュージーランドで最もよく出回っている(と思う)クリアーブルーだ。 最近の検査薬の性能はすごい。以前は、生理予定日から1週間以上過ぎないと正確に 結果が出なかったようだが、今では、受精した日から1週間で分かるらしい。しかも、 結果は9割がた正確だという。
このため、日本では、妊娠の早期に病院へ行き「まだ早すぎて超音波で確認できない ので、●週になったら来てください」と、帰される人も多いとか。
 
帰って早速、買って来た紙包みを開け、トイレへ直行。うむ、予想通り、窓二つとも線が出た。陽性。なんだか興奮して、ソファーでまったり気味のダーの前に突き出す。「えーどうしよー」と予想通りの反応。とはいえ、この人はいつでもあまり動揺しない(隠しているのか、ただ鈍いだけなのか、よく分からないが、彼のそういうところが好きだ)。 しばらくして、「嬉しい?」と聞かれ、「ダーが嬉しいなら、嬉しい」と答える。「そうだね」・・・何となく二人でほのぼのとしてしまった。 結婚を決めて丸1週間。その時は微塵も思わなかった展開に、運命を感じる。「こうなるようにできていたんだね」と、思わず目を合わせた。
 
この日私は、夕方から仕事でパーティーに出なくてはいけなかったので、そそくさと準備に取り掛かる。だが、せっかくのタダ飯というのに、胸がいっぱいであまり手をつけられず。生牡蠣、美味しそうだったけど、こうしたものとは、当分お別れだ。
帰りに電話すると、ダーは即効で迎えに来てくれた。残業で遅くなると、彼はよく迎えに来てくれるが、今夜ばかりは特に大事にされているみたいで、嬉しい。
2004年1月24日
真夏の朝、日がジリジリと暑くなってきた頃にノロノロと起き出す。
いつもの週末の朝。
いつもと同じように、起きるとまずコーヒー。
ペーパードリップで濃い目に入れたブラックコーヒーで目を覚ます。
彼女も少し遅れて起きて来た。
今日は何しようかと話し合いながら、二人で遅い朝食をとる。
いつもの週末の朝。
彼女は夕方から取材の仕事が入っているため、丸1日出掛けることはできないので、特に外出の予定は立てていなかった。
しかしそんな日に限って、家にいるのはもったいないと言わんばかりの夏空が広がっている。
こんな日はビールを飲みながら外でランチを食べるに限る。
という訳で、車で10分ほどのデボンポートまでランチを食べに行くことにした。
夏空の下、モンティース・ビール片手にパスタを頬張る。
いつもの夏の週末。
ランチのあと、良く訪れる古本屋で物色、1冊購入。
家に戻って、俺はソファでウトウトしていた。
 
彼女に結婚しようと言ってからちょうど1週間が経つ。
夫婦別姓制度を支持する私としては、個人的には「結婚」とは、実に簡素な事務手続きのみによって1組のカップルが単に合法的なカップルと認められるための一手段にしかすぎないものと定義づけしている。
好きで一緒に住んでいたらそれだけでいいじゃないかと思う。 本籍地がどうのとか、片方(慣例的には妻)の姓が変わるのでパスポートや銀行口座の名義変更などはまだしも、自分のアイデンティティである姓を捨てなくてはならないことにはどうも釈然としない。そんな訳で私には「結婚」に対する興味も必要も感じなかった。 それなのに1週間前、何故結婚しようと言ったのか?確かに矛盾していると自分でも思うが、実に自然に、そして素直に自分の気持ちから出た言葉ったのは間違いない。w, 結婚を決意したキッカケは、3週間前彼女の実家に滞在させてもらったときのホスピタリティかも知れない。本当に居心地の良い家庭だった。 そんな温かい家庭で育った彼女と、大事に育ててくれたご両親を見て、俺もその仲間に入れて欲しいという気持ちが結婚したいという形になったんだと思う。
 
気持ちよく昼寝してると、何かを手にしてやってきた彼女に起こされた。
「ん~~?」
彼女が何も言わずに差し出す物を、しげしげと眺める。
それが妊娠検査薬だと分かるのに約3.7秒かかった。
さらにそれが陽性反応を示していることを理解するのにさらに4.2秒かかった。
「へぇ、ホントにぃ!?」と素直に驚いてみせた。とは言うものの、この手の検査薬は精度が高いらしいことは聞いていたので、特に疑うこともなかった。
結婚を決めた次の週の出来事である。
「運命」という言葉がすぐに脳裏に浮かんだ。
 
しかし、まったく予期していなかった出来事を前に、自分の感情を表現するよりも、「外国で出産・育児」という現実感が先にたち、「どうしよう…」という言葉しか出なかった。
当然自分が父親になるという概念さえも、この時にはなかった。
2004年1月24日
 
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